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2003年10月23日太陽フレアと磁気インパルス

太陽活動は、ほぼ11年の周期で繰り返しており、今回の活動周期のピークは2000年〜2001年にあり、現在はピークを過ぎて下降期に入ったところである。にもかかわらず、本年10月18日頃から巨大な黒点が出現し、10月23日08時19分UT(世界時)(日本時間17時19分)に発生したフレアはX線強度でX5.4(Xは最上級クラスを意味する)に達する巨大なものであった。このフレアは太陽プロトンは放出しなかったがCME(コロナプラズマ塊)とその前面に太陽風衝撃波を発生させた。この衝撃波は24日15時25分UTに地球磁気圏に到達し、磁気圏を大きく圧縮し、静止衛星軌道(36000km)が磁気圏の外へ飛び出すこととなった。地上の磁場も急激な増加を示し、通信総合研究所が沖縄に設置した磁力計は60nT(ナノテスラ)という大きな磁場増加を観測した。この約30分後の16時UT前後に磁場強度は急激に減少した。この磁場の増加は磁気圏の圧縮を示しているが、南向きの太陽風磁場を伴っていたために、圧縮効果とともに地球磁場のはぎ取りが発生し、磁気圏境界が地球方向へ急速に移動し静止軌道の内側へ入ったと考えられる。この磁気インパルスの直後の16時13分UTから3分間の間に地球観測衛星みどりの電源系統が不調となり回復不能となったために、この太陽フレアと磁気インパルスが注目されることとなった。

この時の宇宙環境を地上の磁場データや米国の気象衛星NOAAで計測している高エネルギー電子(30keV)のデータで調べると次のようなことがわかった。まず、磁気インパルスと同時にオーロラ帯の電離層に強い電流が流れたが、これは磁気圏が圧縮されることによる磁気圏プラズマ対流の増強と南向き太陽風磁場が地球磁場と結合する磁気再結合による発電作用のふたつの機構が働いたと考えられる。それから15分程度のちにさらに電離層電流が強くなり、スカンジナビアのオーロラ帯で2000nT近い強い磁場変動を起こすオーロラジェット電流が発達した。オーロラ嵐(サブストーム)が発生したものと考えられる。15時40分UT頃、NOAA17衛星は21時MLT(磁気地方時)のオーロラ帯を通過し、5000万粒子単位の大量の高エネルギー電子を観測している。またオーロラ電子によるエネルギー流入は最大200erg/cm2/sに達した。このあと16時10分UT頃、NOAA15衛星は朝方のオーロラ帯を通過し、やはり大量の高エネルギー電子(2000万単位)を観測した。この高エネルギー電子の降下に対応して、カナダのリオメータ(銀河雑音電波強度計)が5dBに達する強い銀河電波吸収現象(CNA)を観測した。NOAA衛星で観測された高エネルギー電子が電離圏下部へ降下し、この領域を異常電離したことを示している。この強い電子降下がみどり衛星に影響を与えたかどうかはJAXAで調査中であるが、衛星機器にもっとも強い影響を与えると考えられている1Mev以上のエネルギーを持つ高エネルギー放射線粒子の増加は認められていない。

10月28日太陽フレアと磁気嵐

太陽活動がピークをつけ、下降線をたどる途中に大規模な太陽フレアが発生することが知られている(例えば、1972年8月)が、今回もこれに相当する下降期において、大規模な太陽フレアが発生した。10月28日9時51分UTにX17.2という23日のフレア強度の3倍以上のフレアが発生した。このフレアX線の強度は28年間の観測史上で3番目の規模であり、これに伴って放出された太陽放射線(プロトン)は29500単位という36年間の観測史上で5番目の強さであった。この強い放射線は人工衛星の機器の障害を与える可能性があるが、フレア発生の直後の15時30分UT頃、JAXAのデータ中継衛星こだまの姿勢制御用装置の地球センサーの信号に異常が発生し運用を停止した。衛星はその後正常な運用がおこなわれたが、この際の異常が太陽放射線の影響であると考えられている。放射線の最大値は太陽フレアの歴史に記録されるほどの規模であったが、衛星障害を発生させた時点では3000単位であり、この程度の規模でも要注意である。このフレアにより放出されたCMEは20時間後に地球磁気圏に達し、29日6時11分UTに沖縄で約50nTの磁場増加を発生させ、その後最大370nTに達する大規模な磁気嵐を発生させた。太陽風衝撃波が磁気圏へ到達するのに通常は2日程度かかるが、今回は20時間という短い時間で到達した。太陽から地球まで平均で2000km/sを超える速度で伝播したことになり、フレアの規模がいかに大きかったかを示している。つづいて10月29日20時49分UTにもX10の巨大フレアが発生し、30日20時UTには再び大規模な磁気嵐が発生した。この場合もフレア発生から磁気嵐開始まで約1日とCMEが高速であったことを示している。太陽風やCMEは地球から150万km離れたLagrange1点のACE衛星によって計測されているが、大規模フレアにより測定器が限界を超え、正常な数値を示すことができない状態がつづいた。31日1時UTに回復した時には太陽風速度は1200km/sに達しており、通常の太陽風速度400km/sの3倍であった。磁気嵐の発達にもっとも効果的に寄与する南向き太陽風磁場は50nTという大きさであった。この強い太陽風磁場は北向きの地球磁場と磁気再結合をおこし、磁気圏内へ大量のエネルギーが流入し、このためにオーロラ嵐や磁気嵐が発生した。今回の大規模磁気嵐では北海道や群馬県などでオーロラ発生が報告された。この一連の大規模太陽フレア、磁気嵐による障害は現在調査中であるが、「こだま」のほかに航空、海上の通信が途絶えるなどの障害発生が報告されている。

通信総合研究所では太陽面現象と宇宙環境をリアルタイムでモニターし、事象の発生と今後の展開を予測し、これを宇宙天気予報として情報を提供している。使用しているデータはSOHO衛星による太陽像、ACE衛星による太陽風、GOES衛星による太陽X線、放射線、磁場、さらに地上の磁場観測網と電離層観測網などである。通信総合研究所でも独自に太陽光学・電波観測、極域から赤道での磁場、電離層観測を実施し内外に提供するとともに宇宙環境モニターに活用している。宇宙天気予報はISES(国際宇宙環境情報サービス機構)のネットワークによって国際協力として実施しているが、通信総合研究所ではホームページ等で情報を提供している。そのアドレスは次のとおりである。(2003/11/25)

通信総合研究所 菊池崇

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