宇宙のポータルサイト UNIVERSE

最新宇宙ニュース

◆ ホーム >> 最新宇宙ニュース:2004年 >> 「わが国の宇宙教育と今後の課題」ワークショップに参加して

「わが国の宇宙教育と今後の課題」ワークショップに参加して

3月15日、「わが国の宇宙教育と今後の課題」ワークショップが開かれました。平日のワークアワー、どんな人がどれくらいくるのかなと心配していましたが、会場に着いてみてびっくり。ほぼ満席状態の大入りでした。そしてさらに驚いたのが、学生さんが多かったことです。事務局の発表では、出席者104名、その約3分の1にあたる34名が現役の学生さんということでした。これまでに参加した宇宙関連のさまざまな講演会などの催し物のことを思い返してみると、こんなに学生さんの割合が大きかったことは、あまり記憶にありません。「宇宙教育」に関心を示している若い人たちが少なくないことがわかって頼もしく感じました。そもそもこのワークショップは、宇宙教育の中でもとくに、大学生以上を対象とした「宇宙高等教育」について、教育を行う立場と教育を受ける立場の両側からの意見交換を行うという主旨で計画されたということですので、学生さんのたくさんの参加はとても意味があったと思います。


「釈迦は伝えるのがうまかった?」
(平林先生のパワーポイントから)

教育する立場からは、5人の方々の講演がありました。

UNISEC(University Space Engineering Consortium)などで学生の衛星プロジェクトの活動に参加している東京工業大学の松永三郎助教授からは、学生の手作りのCubeSatなどの詳しい紹介があり、このようなプロジェクトが教育的な意味はもちろん、宇宙開発の場面にも生かせるようなヒントをたくさん含んでいることを感じました。

JAXAでのさまざまな教育活動で活躍中の平林久教授は、これからJAXAで推進・展開していこうとしている「宇宙教育センター」を中心とした教育活動の理念などについて紹介されました。ご自身や天文学者、科学者たちの宇宙観の変遷などにも絡めて、「教える、伝える」ことの意味を味わいのあるイラストで示されたのが印象的でした。

宇宙飛行士の向井千秋さんからは、宇宙連歌の分析、日本全国の学校に配られた宇宙メダカの子孫のその後、身近なものを使っての重力の存在を実感させるデモンストレーションの紹介など、興味深い事例がたくさんありました。「自分がおもしろいと思わないと相手は巻き込めない」、「夢を持ち続けることが大切」という主張はまったくそのとおりだと思います。なお、「宇宙メダカ」の子孫を10年間も大切に飼育している子どもたちの話はとても感動的でしたが、「宇宙メダカ」を特別に大事にするのでなく、「宇宙メダカ」をきっかけとして、宇宙には行ったわけでないふつうの生き物も同じ命として大事に思うようになってほしいと願わずにはいられませんでした。

東北大学の吉田和哉教授、国際宇宙大学(ISU)のウォルター・ピーターズ教授からは、ISUにおける宇宙教育についての詳しい紹介がありました。1987年に創設されたISUは、十数年の伝統の中で充実したプログラムを練り上げてきている、宇宙大好き人間にとってはとてもよくできた教育システムの一つです。中でも座学の時間は少なくして実際に手を動かす時間を多くとること、学生はそこでの経験を発表して広める義務をもつことなどは、よりよい教育の効果を生む姿勢だと思います。ただ、2ヶ月間のSSP(Summer Session Program)で、200万円くらい(食費や住居費を含む)が必要と、費用がかなりかかるそうです。OB組織による費用の貸与システム(返済が必要)などもあるそうですが、助成金などのシステムも期待されています。

教育を受ける立場として2人の学生さんから、講演がありました。UNISON(UNISEC Student OrganizatioN)理事の宇井恭一さん(東京工業大学)、さまざまな学生実験に参加してきた細居洋介さん(東京大学)です。2人とも自分の実験のことがとても好きで、しかも教育の重要性もよく理解していて、熱く熱く話していたのが印象的でした。

この後、講演を受けてパネルディスカッションが行われました。モデレーターのプロ(!)のような的川先生の下、パネラーと会場の参加者たちから、1)若い人たちの要求する教育のターゲットは何か、2)教育を行う側が供給できるものは何か、3)JAXAとして何をしていくべきか、について活発な意見交換が行われました。いろいろ有意義な意見が出て、僭越ながらパネラーの一人として参加していた私もずいぶん勉強させてもらいました。私もJAXAの「宇宙教育センター」の活動にできるだけ協力していこうと考えている1人です。「宇宙」は多くの人にとって、非常に魅力的であるし、理科、科学などの教育のきっかけに利用しない手はないのですが、本当は、その「宇宙」にすらまったく関心のない人たちも少なくなくて、こういう人たちに、どうやって「学ぶことの楽しさ」を実感してもらうかが大きな問題であると考えます。今回は、このあたりのことはあまり話題にならなかったのが少し残念でした。

最後に、このようなワークショップの開催の重要性がよくわかりました。JAXAで「宇宙教育センター」が発足したら、その方針を定める助けとできるような研究会をやろうという声もささやかれているようです。ちょっと気が早いですが、そうなったあかつきには、たくさんの方々の参加を期待しています。(2004/3/22)

宇宙航空研究開発機構 黒谷明美

Copyright