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さて、いま火星に行って、地面を走り回っている探査機の名前は、何というでしょうか…?
ローバ?そうですよね。でも、これまで火星に行っているローバは、他にもありますよね。
今回のアメリカの火星探査は英語で Mars Exploration Rover といいます。何でも省略することが大好きなアメリカでは、MERと略したりします(余計ですが、merってフランス語で「海」ですよね。ここでも水に絡んでいます)。
直訳すると「火星探査ローバ」あるいは「火星探査車」ということになりますが、私たちは、最近の宇宙関係の流儀に倣って、原語通り「マーズ・エクスプロレーション・ローバ」と記述しています。やや堅苦しいのですが。
そもそも、日本のものではない探査機の名前というのは、特に決まっているわけではないので、書くのは難しいのです。原語通りに書こうとしますと、1997年に打ち上げられた火星探査機 Mars Pathfinder は「マーズ・パスファインダ」、その翌年に打上げられて失敗した Mars Climate Orbiterは「マーズ・クライメイト・オービタ」と書くことになります。しかし、やはり分かりにくいという感じはありますし、何といっても長いですよね。「クライメイト」っていわれても、日本人にはピンと来ません。やはり「火星気候探査機」のほうがしっくり来るようにも思います。

かつて、旧ソ連が1960〜1970年代に打ち上げていた火星探査機も、最近の多くの資料では、ロシア語の発音通り「マルス」シリーズとして書くようになってきています。しかし、ちょっと昔の本をみますと「火星」と表記されている本などもたくさんみかけます。例えば、火星にはじめて軟着陸した旧ソ連の探査機は「火星3号」と書かれたりします。

火星からちょっと離れますが、金星探査も同じような傾向になってきています。旧ソ連は1960年代から70年代にかけてたくさんの金星探査機を打ち上げました。それらは、最近の流儀では、ロシア語の発音通り「ベネラ」と書く方が多いようです。しかし、本によっては「金星」と書かれているものもあります。では、旧ソ連の月探査機 Luna (ルナ)はどうでしょう? こちらはさすがに、「月26号」と書かれた資料はみかけませんね…。

 「マルス」も「火星」も、どちらも同じ探査機を指すのですが、本やネットで検索する時には、意外と厄介な問題になります。 例えば、グーグルで「マーズ・ローバ」と「マーズローバ」、「マーズローバー」を検索してみたら、いずれも違う結果が出てきますよね。ネット検索がある種の情報インフラとして機能し、そこでちょっとした点や「ー」のある/なしが問題になるような情報化社会では、名前の問題もだんだん深刻になってくるかも知れません。

私が今いちばん困っているのは、2005年打ち上げ予定の探査機 Mars Reconnaissance Orbiter です。私たちのサイトでは、例によって原語通り「マーズ・リコナイサンス・オービタ」と書いているのですが、意味としては、直訳の「火星偵察周回機」がわかりやすいかも知れません。でも、「偵察」って別に火星人の基地を見に行くわけでもないですし、周回機も既に何機も打ち上げられていますから、他の探査機と間違えるおそれもあります。こういうのって、どちらがいいのでしょう?

大体、「ローバ」という名前そのものも分かりにくいです。英語のもともとの意味は、「歩き回る人」という意味になりますが、そこから派生して、地球や惑星の表面などを走り回る、小型の車を意味するようになりました。直訳すると「探査車」となりますが、意味をとって「月面車」「火星面車」などと書くこともあります。ただ、こうなると、「はやぶさ」に搭載されているマイクロローバ「ミネルバ」は、「イトカワ面車」になってしまいます。(2004/3/30)

宇宙航空研究開発機構 寺薗淳也

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