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肉眼で見えるような明るい彗星が現れるのは、それほど多くはありません。せいぜい10年で数個といったところなのですが、実はこの4月下旬から5月にかけて3つの彗星が出現する”彗星ラッシュ”となっています。

まず4月下旬。24日の週末あたりから明け方の東の地平線に顔を出してくるのが、ブラッドフィールド彗星(C/2004 F4)。この彗星を見つけたのはオーストラリアに住むウィリアム・ブラッドフィールドさんです。70年代から数多くの彗星を発見してきた大ベテランで、今回の彗星がなんと18個目という現役では記録保持者です。そして、その年齢を聞いて驚く無かれ、77歳!老人パワーもここに極まりの感がありますね。

ブラッドフィールドさんが、この彗星を発見したのは3月23日だったのですが、日没直後の西空の低空だったので、確認に手間取り、国際天文学連合が発見を承認したのは4月中旬でした。4月13日には、約3等星の肉眼彗星となって、月の直径ほどの尾を伸ばしていました。そして太陽に接近し、非常に明るくなった様子が、太陽観測衛星SOHOによって捉えられています。その様子はインターネットでも見ることができます。
http://sohowww.nascom.nasa.gov/をご覧ください。)

さて、4月下旬のブラッドフィールド彗星は、明け方の東の地平線上に顔を出すときには約3等級から4等級に成っていると思われます。肉眼で見える明るさですが、超低空のために双眼鏡を使わないと難しいでしょう。また、明け方の東の低空まで透明度の良い条件に恵まれることと、見通しの良い場所での観察が必須です。その後は連休を通じて次第に高く上がってくるので見やすくなる一方、太陽からは離れていきますので暗くなっていきます。

ところで、このブラッドフィールド彗星が現れる頃、おなじ東の地平線には、リニア彗星(C/2002 T7)が並んでいます。こちらは、2002年10月にアメリカ・リンカーン研究所の”リニアプロジェクト(LINEAR=Lincoln-Laboratory Near Earth Asteroid Research)”のチームが発見した彗星で、発見時の太陽からの距離が約10億キロメートルと非常に遠く、大彗と期待されました。そして、ちょうどブラッドフィールド彗星が東の地平線に出現する4月23日には太陽に9千万キロメートルまで近づき、3等から4等星に輝いているはずです。ですから、条件さえ良ければ、二つの彗星が東の地平線で並んで見えると期待されているのわけです。

実は、今回の彗星ラッシュは、これで終わるわけではありません。連休明けになると、今度は日没後の夕方の西の地平線に、もうひとつの大彗星が現れます。2001年夏に発見されたニート彗星(C/2001 Q4)です。アメリカ・パロマー山天文台、口径1.2mシュミット望遠鏡による近地球小惑星観測プログラム”ニートプロジェクト(NEAT=Near-Earth Asteroids Tracking programme)で発見された彗星なのですが、その時の太陽からの距離が約15億キロメートルもありました。これは、ほぼ土星の軌道あたりになります。彗星は氷でできた天体ですから、こんな遠くではそれほど蒸発しません。なのに遠方でも見つかるというのは、彗星に含まれる一酸化炭素や二酸化炭素などが蒸発している証拠で、相当に大きな彗星である必要があります。新彗星が発見された距離としては、このニート彗星が最遠記録となりました。

この彗星が5月の連休明け頃から、日本でも日没後の西の地平線に現れます。日ごとに高く見やすくなっていきますので、5月末まで楽しめるでしょう。明け方よりも見やすい時間帯ですから、一般の人にはお勧めです。太陽への最接近は5月15日ですが、地球からも離れていくので、5月の中旬までは明るさは2等星程度で、ほぼ変わらないでしょう。その後は急速に暗くなっていきます。

特筆すべきは、5月下旬になると南西の地平線にリニア彗星が合流することです。一旦、太陽に近づいて明け方の東の空から消えていったリニア彗星が、再び南西の空に現れるのです。5月27日頃には、もしかすると日本でもニート彗星との競演が見られるかもしれません。ただ、リニア彗星の明るさはニート彗星よりも明るいとはいえ、南西の地平線ぎりぎりですので、地平線まで良く晴れた日を選んで、地平線まで見渡せる場所に行かないと実際の観察はなかなか難しいかもしれません。

肉眼で見えるような明るい彗星といえば、思い出すのは1996年に百武彗星、1997年にヘール・ボップ彗星という二つの彗星でしょう。後者は1000年に一度という、きわめて大きな彗星だったので、何ヶ月も肉眼で見えていましたが、通常一つの彗星が肉眼で見えるほど明るい期間は、1ヶ月以下と短いことが多いものです。ですから、今回の三彗星のように明るくなる時期がほぼ重なって出現すること、さらに同時に夜空を飾る条件となるのは、とても珍しいことです。これまで肉眼彗星がふたつ同時に夜空に現れ、それが目撃された例は1618年第2彗星と第3彗星しかありません。今回は、それ以来、約400年ぶりの彗星の競演といえるのですが、さて三つもの彗星のラッシュとなると、過去の記録にも無いかもしれません。三つの 彗星が、このまま期待通りに明るくなって、肉眼で見えるほどになれば、21世紀初頭の記録的な天文ショーになることは間違いないでしょう。少なくともニート彗星は日本からも条件がよいので、ぜひチャレンジして欲しいと思います。(2004/4/22)

自然科学研究機構国立天文台 渡部潤一

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