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カッシーニと土星

カッシーニと土星

7年前の1997年10月にアトラス4‐セントール・ロケットによって打ち上げられたNASA(米国航空宇宙局)とESA(欧州宇宙機関)の共同ミッションである土星探査機「カッシーニ」が、35億キロの長旅を経て土星に到着し、いよいよ多産な成果の一端を披露しはじめています。

カッシーニがとらえた土星の衛星

カッシーニがとらえた土星の衛星

まず、すでに土星接近前の6月12日に衛星フェーベに約2,000キロまで接近し、その岩だらけの表面を生々しく見せてくれました。

そして7月1日には、土星を美しく取り巻くリングを赤外線と紫外線で撮像しながら、FリングとGリングの間のすきまを南側から北側へ通過した後、96分間にわたってメインエンジンを噴かし、土星を周回する軌道に入りました。そこは、地球まで電波や光が届くのに1時間24分もかかる僻遠の地です。エンジンを止める少し前に、探査機カッシーニは、その探査計画の中で最も土星に接近する瞬間を迎えました。その距離は土星の中心から約8万キロで、土星の雲の上から測ると約2万キロ、土星の直径の1/6程度しかありません。


カッシーニの軌道計画

次いでカッシーニはやはりFリングとGリングに間を北側から南側へ通過しました。メインエンジンによるブレーキは、すべてリングの北側にいる間に行われたことになります。リングの平面を通過する際には、リング粒子が衝突して機体を損傷する危険もあるため、直径4メートルの高利得アンテナを進行方向に向け、盾代わりにしました。高利得アンテナが受ける損傷は、地球との通信にとって被害が比較的小さいと見たのでしょうね。

タイタン

タイタン

7月3日には、土星の最大の衛星タイタンの写真が公開されました。

公開されたのは赤外線による分析画像で、赤い部分は炭化水素の豊富な地域、黒っぽいのが氷の多い地域、下の方にある白いスポットはメタンの雲だそうで、これまでべったりと一様にしか見えていなかったタイタンが、いよいよ複雑な容貌を表し始めましたね。

地球における水の働きを、タイタンではメタンが行うと考えられています。タイタンの南半球を覆うメタンの雲からは、メタンの雨が降り、このメタンの雲がタイタンの気象を支配しているのです。カッシーニは今年10月にタイタンに接近する予定で、その時には、より鮮明で詳細な画像が得られ、不思議でワクワクするような「アナザー・ワールド」が見物できるでしょう。

土星のリング(カッシーニ)

土星のリング(カッシーニ)

米コロラド大が7日に発表した土星のリングの紫外線画像は、もちろん実際に目に映る様子とは違いますが、リングから出ている波長の違いに基づいて、その成分の違いがコンピューターで色分けして示されています。

それによると、土星のリングは思ったよりもはるかに「汚れて」いました。赤い部分は岩石やちりでできており、緑っぽい部分は氷などが主成分になっているところです。ということは、赤い部分の多い内側のリングの辺りには、岩石やちり(科学者たちはmudつまり泥と呼んでいます)がいっぱいあるということです。

これまで私たちは、土星のリングの大部分が水の氷だと教えられてきました。今回のカッシーニの写真によって、リングの外側に行くにしたがって水が多くなっていく様子が一挙に浮かび上がっています。まさに百聞は一見にしかず、ですね。

土星のリングがどのようなメカニズムで形成されたかはまだよく分かっていません。氷状の天体が土星の強い重力にとらえられてバラバラになったなどの説が提案されています。いずれにしても今回の写真は、リングの起源を解明するために役立つでしょう。

さて今後のカッシーニの予定ですが、まず今年の11月には、カッシーニ本体からヨーロッパ製のプローブ「ホイヘンス」が切り離され、衛星タイタンにパラシュート降下します。ホイヘンスは、厚い雲に覆われたタイタンの大気を貫きながら(できれば)3時間観測をつづけ、観測データはカッシーニ本体で中継して地上に送信されます。

2008年6月末まで予定されている飛行計画中、カッシーニは土星を76周以上まわり、タイタンに35回近づくのをはじめ、土星の衛星のうちイアペトゥス、ディオーネー、エンケラドゥスなどの衛星に次々と接近します。この計52回にわたる衛星接近を含む土星システムの観測によって、土星の大気・リング・磁気圏が詳しく調査され、その衛星たちの鮮明なクローズアップ写真が得られるでしょう。

私は、特に謎に満ちたタイタンの大気と地表の姿が私たちの前に史上初めて明らかにされることを大変心待ちにしています。タイタンの上層大気では光化学反応が起きているはずです。その結果生じる炭化水素が、タイタンの地表に湖を作り出していると予測されます。大気中で生成された炭化水素は、濃度を増していくとスモッグ層を形成し、ついには雨となって地表に降り注ぐと考えられるからです。カッシーニの本体に搭載されるレーダーによって、タイタンの厚い雲を通して、その地表に液体が存在するかどうかが調べられるし、また本体とホイヘンスの両方で、この特殊な大気が形成される化学反応過程が調べられますよね。まことに楽しみなカッシーニの将来です。(2004/7/12)

今年も、暮れから正月にかけては刺激の多い年になりそうな予感がしています。

宇宙航空研究開発機構 的川泰宣

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