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◆ ホーム >> 最新宇宙ニュース:2005年 >> まだまだ頑張っている火星ローバ 〜火星ローバ探査最新情報〜

あの興奮から1年4ヶ月…皆さんは火星探査のことなど、もうすっかり忘れてしまっているかも知れません。ですが、火星ローバはまだまだ頑張っています。小さな2台のローバ「スピリット」と「オポチュニティ」の冒険物語は、しばらく終章を書けそうにありません。
ここでは、最近のトピックスをご紹介しながら、ローバの活躍を追いかけてみることにしましょう。

とうとう、3度目の探査期間延長

ローバは昨年(2004年)の1月に着陸しました。そのとき、探査チームとしては、「3ヶ月間動作ができれば大成功」と言っていました。ところが、実際にはローバは、3ヶ月をはるかに上回って動作を続けています。
もともと、3ヶ月という期間を決めていたのは、ローバの太陽電池の発電量でした。火星の大気中には、地表から巻き上げられた砂が大量に舞っています。これがローバの太陽電池に少しずつ降り注ぐことで、太陽電池にあたる日光の量が減り、ローバ全体の発電量が減少すると考えられていたのです。
しかも、火星は冬の時期に向かうところでした。冬を乗り切るためには電力も必要ですし、太陽光の量も減ります。さすがにそこまではもたないのではないか…と、多くの技術者は考えていたようです。

ところが、その予想をうれしいことに裏切って、ローバは現在も動作しています。この4月(2005年4月)には、3回目になる探査期間延長指令が出て、ローバが元気であれば、来年の9月まで動作を続けるということになりました。 では、なぜローバは長持ちしているのでしょうか? そのキーポイントは、太陽電池にあります。
本来であれば砂が積もって発電量が低くなるはずの太陽電池が、長持ちしているのです。実際、太陽電池の上には思ったほど砂が積もっていません。なぜでしょう?
科学者たちの推論の中でも有力なものが、「風で吹き飛ばされた」というものです。実際、3月になって「スピリット」の発電量が突然2倍に跳ね上がるという現象がありましたが、この直前に強い風が噴いていたことがわかっています。

この強い風を裏付けるような現象が発見されました。「スピリット」が捉えた火星のつむじ風です。写真は、何枚か連続で撮影された写真をアニメーションにして出していますが、このようなつむじ風が火星の表面で、ひょっとするとごく当たり前に吹いているのかも知れません。そしてその際に、ローバの太陽電池パドルをきれいに「拭いて」くれているのかも知れません。

火星のつむじ風

火星のつむじ風 (C)NASA/JPL

鉄いん石を発見

火星表面の鉄いん石

火星表面の鉄いん石 (C)NASA/JPL/Cornell

火星の表面にはいろいろなものがあります。しかし、鉄いん石が落ちているということまで予測した科学者はあまりいなかったようです。

鉄いん石とは、地球や火星などに降り注いでくる小さな岩(いん石)の中で、鉄やニッケルなどの金属分が多く含まれているものです。おそらくは、火星の外側にある小惑星帯などからやってくると思われます。

この鉄いん石を発見したのは、2号機「オポチュニティ」です。写真をみると、全体に穴が開いていて、大きさは直径数十センチメートルくらいです。それほど大きなものではありません。

鉄いん石が発見されたのは、「オポチュニティ」が探査しようとして接近していた、耐熱板の近くです。この耐熱板は、ローバが火星へ突入するときに、火星の大気との摩擦で発生する高熱を防ぐためのもので、着陸の直前に切り離され、火星の地表に落ちていたものです。

ローバの主任科学者であるスティーブ・スクワイヤーズ博士も、「まさか、火星で鉄いん石を分析することになるとは思わなかった」と驚いています。科学者たちは、早速、火星の表面には他にも鉄いん石やいん石があるのではないかという推測を立てています。火星の表面でみつけた岩の中にもいん石が含まれているかも知れませんし、いん石がたくさん落ちている場所があることも考えられるでしょう。

将来的には、そういった場所からいん石を持ち帰って分析する、といったことまで、既に考えられています。


全力疾走!

電力回復の後押しを受けて、ローバも元気に動き続けています。現在、「スピリット」はグセフ・クレーターにあるコロンビア・ヒルにいます。「コロンビア・ヒル」のコロンビアは、2003年2月に事故で失われたスペースシャトル「コロンビア」からつけられたものです。「ヒル」は丘の意味ですから、日本語でいうと「コロンビアヶ丘」ということになります。
このコロンビアヶ丘の中にあるハズバンド・ヒルという丘(ハズバンドは、この事故で殉職したリック・ハズバンド宇宙飛行士に因んで名付けられました)への丘登りを続けています。
それに比べると、平地を走っている「オポチュニティ」はもう少し楽といえるでしょう。こちらは、長さが数百メートルある領域「エッチド・プレーン」というところへ向かっています。「エッチド」というのは、削られた、あるいは彫り込まれたというような意味です。プレーンは平原の意味ですから、彫り込まれたようにくぼんだ平原ということになります。
ここになるべく早く到達するために、「オポチュニティ」は飛ばしまくっています。3月20日には1日の走行距離が火星記録の220メートルに達しました。あまりに飛ばしているために、先に到着した「スピリット」よりも総走行距離が長くなり、約5キロにまで達してしまいました。5キロというと大したように感じられないかも知れませんが、地球から電波で10分以上かかるところにある、大きさ1〜2メートルのローバが、5キロも走るというのはすごいことです。

 このように、2台のローバの火星探検はまだまだ続いています。これからもローバの動きからは目が離せません。また新たな火星の謎にチャレンジして、新しい成果を出してくれるように、期待したいところです。(2005/5/10)

宇宙航空研究開発機構 寺薗淳也

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