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◆ ホーム >> 最新宇宙ニュース:2005年 >> 「はやぶさ」がイトカワへの着陸&離陸に成功、月以外の天体では世界初

いやあ、驚きましたね。「事実は小説より奇なり」と言いますが、全く私たちはまるで夢を見ているのでしょうかねえ。地上局と「はやぶさ」のハイゲインを通じたしっかりしたリンクが確立され、「はやぶさ」のデータレコーダーに溜め込まれた膨大なデータが地上局に降って来ました。一昨日来の緊迫したデータ解析の結果、「はやぶさ」は、世界初の小惑星への軟着陸に成功したことが判明しました。しかも、月以外の天体において、着陸したものが再び離陸をなしとげたのは、世界初です。

ただし、着陸直後に起動するはずだった「サンプル採取のシーケンス」は動いていませんでした。にもかかわらずサンプルが採れている可能性は充分あるのですが、残念ながら現在はその可否について結論を下せません。というわけで、「あの11月21日に何が起きていたか?」についてのレポートです。詳細なデータ解析はまだ完全には終わっていませんが、これまでの結果が疑問の余地なく教えてくれるものを記述しました。詳しくはISASのWebをご覧下さい。

「はやぶさ」は、日本時間2005年11月19日の午後9時、イトカワから高度約1kmのところから降下を開始し、以後の誘導と航法は順調に行われました。翌20日の午前4時33分に地上からの指令で最終の垂直降下を開始し、ほぼ目的とした着地点に「はやぶさ」を緩降下させることに成功しました。目標点との誤差は、現在解析中ですが、おおむね30m以内であったものと推定されています。3億km彼方での誤差30mはすごいですよ。東京から博多の0.1ミリの的を射当てるくらいの精確さですからね。図1は、その降下の軌跡です。


図1 「はやぶさ」のイトカワへの降下軌道

垂直降下開始時の速度は毎秒12cmでした。午前5時28分、高度54mに到達した時点で、ターゲットマーカーの拘束解除の指令を出し、同30分、高度40mで、探査機自身が毎秒9cmの減速を行って、マーカーを切り離しました。つまり、マーカーは秒速12cmで降り続け、「はやぶさ」本体は秒速3cmで降下していったというわけですね。マーカーは、イトカワ表面上、「ミューゼスの海」の南西に着地しました(図2)。「はやぶさ」はその後、高度35mでレーザ高度計(LIDAR)を近距離レーザ距離計(Laser Range Finder: LRF) に切り替え、高度25mで、降下速度をほぼゼロにして浮遊状態(ホバリング)に入りました。


図2 「はやぶさ」から分離された、署名入りターゲットマーカ

その後、「はやぶさ」は自由降下を行い、日本時間午前5時40分頃、高度17m付近で、地表面の傾斜に自分の体の向きを合わせる姿勢制御のモードに移行しました。この時点で、「はやぶさ」は自律シーケンスにより、予定通り地上へのテレメトリの送信を停止し、ドプラー速度の計測に有利なビーコンのみの送信に切り替え、同時に、送信アンテナを広い範囲をカバーできる低利得アンテナに切り替えました。

以降、実時間での搭載各機器の状態の把握は(予定通り)できなくなりましたが、「はやぶさ」上で記録されたデータを再生した結果によれば、「はやぶさ」はまもなく、
1 障害物検出センサが何らかの反射光を検出した
2 そのため、降下の中断が適当と自らが判断して緊急離陸を試みた
3 しかし、「はやぶさ」自身で離陸加速を遂行するためには姿勢に関する許容範囲が設定されており、この時点では姿勢がその範囲の外にあったので、安全な降下の継続が選択された
4 その結果、「はやぶさ」は、着陸検出機能を起動しなかった

当初、「はやぶさ」は表面への着陸を行っていなかったと判断されていましたが、再生したデータによれば、「はやぶさ」はその後ゆるやかな2回のバウンドを経て、およそ30分間にわたりイトカワ表面に接触を保って着陸状態を継続していたことが確認されています。これは、近距離レーザ距離計の計測履歴や、姿勢履歴データから確認することができます(図3)。

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図3 21時10分と21時30分に着陸したことを示す、近距離レーザ距離計の計測値履歴

この事象が生じたのは、米国航空宇宙局(NASA)の深宇宙局(DSN) から臼田局への切り替えの間であったため 、地上からのドップラー速度計測では、これを検知できませんでした。2回のバウンド時の表面への降下速度は、毎秒約10mでした。現時点では探査機への大きな損傷は確認されていませんが、ヒータセンサの一部に点検を要すると思われる項目があるもようです。

「はやぶさ」は、安定して着陸を継続し、日本時間午前6時58分に地上からの指令で緊急離陸を行いました。この離陸をした時点で、「はやぶさ」は、月以外の天体から離陸した最初の宇宙船となりました。 試料採取のための着陸検出機能は、上記の理由で起動されていなかったため、実際に着陸が行われていながら、弾丸の発射は行われず、サンプル採取に関わる、以降のシーケンスは実行されていません。着陸した姿勢は、サンプラーホーンと探査機の+X 軸側下面端または太陽電池パネルの先端を表面に接した形態であったと推定されています。イヌがお座りをしているような横着な姿勢ですね。

「はやぶさ」は指令を受け離陸した後、セーフモードに移行し、これを立て直すために、11月21,22日の両日を要しました。このため、今日現在でも、20日に記録したデータの再生はなお中途の段階にあり、なお今後の解析でさらに新たな事実が出てくる可能性もあります。現時点では、着地点の詳細画像や、正確な着地点を推定するための画像の再生にはいたっていません。「はやぶさ」は、現在、再度の着陸・試料採取シーケンスを開始できる地点に向かって飛行しているところです。日本時間の11月25日夜から降下を開始できるかどうかは微妙であり、本日(11月24日)の夕方に改めてお知らせすることになります。(2005/11/24)

宇宙航空研究開発機構 的川泰宣

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