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◆ ホーム >> 最新宇宙ニュース:2006年 >> 「ようこう」衛星がとらえた 太陽のベストショット10

みなさま、2006年の新年、明けましておめでとうございます。
年頭に当たり、文字通り「明るい」光を放っている太陽についての話題を お届けします。そうです。日本の太陽観測衛星「ようこう」のことです。
「ようこう」は、1991年8月に鹿児島・内之浦の発射場からM-3SUロケットによって 打ち上げられ、以来2001年12月まで、X線とガンマ線で約11年間にわたって太陽の観測を行いました。
太陽の活動は活発になったり衰えたりしているのですが、その周期が約11年です。 「ようこう」は、その1周期をほぼカバーした世界初の太陽観測を行った衛星になりました。「ようこう」は、
● 太陽コロナがさまざまな時間スケールでダイナミックに構造を変えていること
● フレア等の爆発現象が太陽コロナ中の「磁気リコネクション」現象であること
を世界で初めて観測的に明らかにするなど、数々の画期的な科学成果を産み出し、 20世紀最後の10年間を、輝かしい太陽観測の成果によって締めくくりました。
2005年の暮れに、太陽の研究者たちが、「ようこう」がもたらしたさまざまな業績 の中から、べストショット10点を選び、JAXA宇宙科学研究本部のホームページに載せてくれました。それらをここに再録します。
今年の夏には、「ようこう」の後継機であるSOLAR-B衛星が、内之浦からM-Vロケットに搭載されて地球周回の旅に出ます。ここにお伝えした 「ようこう」の素晴らしいショットは、SOLAR-Bによってさらに深く美しいイメージとして展開されていくことでしょう。 そのことを期待しながら、楽しんでください。
今年もよろしくお願いします。(2006/1/5)

宇宙航空研究開発機構 的川泰宣

(1)軟X線で見る太陽(全面像)

軟X線を通して太陽を見ると、数百万度という太陽コロナが映し出されます。明るいところがX線の強い領域、暗いところがX線の弱い領域に対応しており、太陽全体でX線放射が一様でないことがわかります。太陽面には細かいループが数多くあり、これらループは磁力線を反映しています。 太陽の現象を理解するためには、磁力線を映し出すループ構造を細かく観測することが極めて重要です。そして、これほどコロナのループを細かく観測できたのは「ようこう」衛星が世界で初めてでした。この1枚の画像からも「ようこう」衛星の性能の凄さを伺い知ることができます。全面像を動画にして見ると、コロナが常時ダイナミックに変化していることがわかりました。 このコロナが激しく変動する様子は、それまでの「静かな太陽コロナ像」を一新する劇的な大発見となりました。


(2)軟X線で見る太陽活動周期

「ようこう」衛星によって世界で初めて1太陽周期にわたる軟X線観測が行なわれました。手前が黒点数の多い太陽活動極大期、奥が黒点数の少ない太陽活動極小期の太陽を 表しています。極大期ではX線の強度が強く、特に黒点上空の活動領域からはX線が強く出ています。一方、極小期ではX線が弱まり、全体的に暗くなっています。 1太陽周期に渡る長期観測により「ようこう」衛星は、太陽活動の移り変わりに伴うコロナの変化を明らかにしました。


(3)カスプ型フレア

寿命の長いフレアを軟X線で見ると、ループの先がとがった構造が見られます。この先のとがった構造をカスプと言い、「ようこう」衛星によって初めて観測されました。 カスプ型フレアの特徴として、カスプループの高さと足元の間隔が時間とともに大きく成長すること、ループの外側ほど高温になっていることがあげられます。そして、これらのことから寿命の長いフレアが、コロナ中の反平行の磁力線がつなぎ変わる 磁気再結合(磁気リコネクション)を通して発生していることがわかりました※。このカスプ構造の発見は、「ようこう」衛星の大きな成果の一つに挙げられます。 この画像は1992年2月21日に観測されたカスプ型フレアです。

※(3)と(4)の結果から、寿命の長さに関わらず、フレアのエネルギー解放は磁気リコネクションであることがわかりました。


(4)フレアループ上空の硬X線源

1992年1月13日のフレア。カラーは軟X線像、白の等高線は軟X線よりも高エネルギーの 硬X線源(33−53keV)、白線は太陽の縁を表しています。寿命の短いフレアを軟X線で見ると、ループの形をしています。当初、この種のフレアは、光っているループ内でエネルギー解放が起きているのではと考えられていました。 ところが、「ようこう」衛星の硬X線観測によって、フレアループの上空に位置する硬X線源が発見されました。これはフレアのエネルギー解放がフレアループの上空で起こっていることを示しており、この大発見によって寿命の短いフレアもフレアループ上空での磁気リコネクションを通して 発生していることがわかりました※。

※(3)と(4)の結果から、寿命の長さに関わらず、フレアのエネルギー解放は磁気リコネクションであることがわかりました。


(5)巨大アーケード

1994年4月14日の巨大アーケードの時間発展。色を反転して表示しており、暗いところがX線の強い領域に対応しています。 しばしば巨大なアーケード構造が黒点から離れた極近くで発生することが、「ようこう」衛星の観測によってわかりました。この巨大アーケードは太陽半径※を越えるほどの大規模な磁場構造の変化を表しており、プロミネンス放出や惑星間空間に 大規模なプラズマの塊を放出するコロナ質量放出現象(CME)に伴って形成される現象です。この現象は10時間以上かけてゆっくりと発達していきます。

※太陽半径は約70万km


(6)巨大カスプ

太陽の縁で発生した巨大アーケードを観測すると巨大なカスプ構造をしています。巨大カスプもカスプ型フレアと同じように、時間とともにカスプの高さと足元の間隔が大きく成長する特徴をしています。 巨大アーケードや巨大カスプも磁気リコネクションが重要な役割を果たしています。画像は1992年1月24日から形成された巨大カスプで、翌25日6:23UTの姿です。


(7)X線プラズマ放出現象

「ようこう」衛星の成果の1つに、フレアのエネルギー解放過程が磁気リコネクションであることを確証したことがあげられます((3)、(4)参照)。その証拠の1つに、磁気リコネクション・モデルで予測される高温プラズマの放出が軟X線観測によって発見されたことがあります。 X線を放射するほどの高温プラズマですので、この現象をX線プラズマ放出現象と呼んでいます。 画像は1992年10月5日のX線プラズマ放出現象の時間変化です(色反転表示)。黒線は太陽の縁を表しています。矢印で示したX線プラズマがフレアループの上空を右方向に飛んでいることがわかります。 一般的なX線プラズマの放出速度は10〜400km/秒です。


(8)マイクロフレア(トランジェント・ブライトニング)

「ようこう」衛星の観測によって、コロナが我々の想像を超えるほど活動的に変化していることがわかりました((1)参照)。 活動領域をより詳細に見ていくと、画像中の矢印で示したようにたくさんの小さなループが突然明るくなったり、暗くなったりしていることがわかります。これはマイクロフレア(トランジェント・ブライトニング)と呼ばれ、解放されるエネルギーは最大級のフレアに比べて6桁ほども小さい爆発現象です。「ようこう」衛星の軟X線望遠鏡の優れた性能によってマイクロフレアの撮像観測が初めて可能となりました。 画像は1991年10月31日の活動領域(NOAA6891)の時間変化を示しています(色反転表示)。


(9)X線ジェット

コロナでの高温なジェット現象が、「ようこう」衛星の軟X線望遠鏡によって発見されました。画像で示した1992年1月11日のX線ジェットは、「ようこう」衛星が観測した中でも最大級のジェットです(色反転表示)。 各画像の中央付近から上に向かって伸びた構造が、時間とともに成長していることがわかります。このX線で観測された構造をX線ジェットと呼びます。X線ジェットはフレアやX線輝点と関係しており、画像でもX線ジェットの足元でフレアループが明るく光っています。 X線ジェットはフレアと同様に磁気リコネクションによって発生していることも「ようこう」の観測やシミュレーションからわかりました。X線ジェットの典型的なサイズは長さが数万〜数十万km、幅が1000〜1万km、平均的な速度は約200km/秒です。


(10)シグモイド

1997年4月7日に発生したフレア前後のコロナループの変化。右上図のようにS字型にねじれた磁力線をシグモイドと言います。「ようこう」衛星以前の観測においてもコロナ中にねじれた構造があることはわかっていましたが、「ようこう」衛星によってねじれた構造がS字型をしていることがわかりました。 磁力線はねじれが強いほどエネルギーが多く蓄えられます。そのため、シグモイドの領域では、惑星間空間に大規模なプラズマの塊を放出するコロナ質量放出現象(CME)やフレアの発生が多いこともわかりました。 CMEやフレアを通して過剰なエネルギーを解放すると、右下図のようにねじれの弱い磁力線へと変化します。


宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究本部「ようこう」グループ

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