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冥王星が発見されてまだ100年経っていない…この事実にびっくりする人も多いのではないでしょうか。太陽系の惑星の数は「9」とすぐに答えられる人でも、冥王星がいつ発見されたかは意外とわからないでしょう。やはり、太陽系でもっとも遠くの惑星だけあって、冥王星についてはまだまだなぞに包まれています。

1930年、天文学者クライド・トンボーにより発見された冥王星は、大きさが直径2400キロ。火星や水星どころか、土星の衛星タイタンや木星の4つのガリレオ衛星よりも小さいという小さな惑星です。

太陽から60億キロも(平均で)離れていることから、表面の平均温度はマイナス230度と推定されています。そして、冥王星はとにかく、他の惑星と比べて違うことが多すぎます。

まず、公転軌道が、他の惑星に比べて約17度も傾いています。また、公転軌道の形も大きな楕円になっています。平均の距離が40天文単位ですが、近づくときには29天文単位(*1)、いちばん遠いときには50天文単位まで離れてしまいます。

変わっているのは軌道だけではありません、1978年に発見された、衛星カロンの存在も科学者を驚かせました。そもそも、この程度の大きさの惑星に衛星があること自体が驚きなのですが、直径が約1200キロと、冥王星の半分くらいの大きさがあるのです。これでは、まるで冥王星は、「双子惑星」と言っても差し支えないような惑星系だといえるでしょう。

さらに、1990年代になってから、海王星から冥王星の軌道あたりの距離に、冥王星並み、もしくはそれよりも大きな天体が続々と発見されるようになりました。これらの天体は「エッジワース・カイパーベルト天体」(*2)と呼ばれ、冥王星も実はこのカイパーベルト天体の一群ではないかと考えられるようになりました。そのため、「冥王星は実は惑星とはいえないのではないか」ということさえ議論されたことがあります。

さて、冥王星は、人類の探査機がまだ行っていない、唯一の惑星でもあります。ハッブル宇宙望遠鏡でみても、ぼんやりとした模様がみえるものの、表面の細かい分類をするのにはあまりに遠すぎて解像度が足りません。まだまだ分からないことだらけの天体です。


<写真: ハッブル宇宙望遠鏡で撮影された冥王星(左)とその衛星カロン(右)。>
(Photo: Dr. R. Albrecht, ESA/ESO Space Telescope European Coordinating Facility; NASA)


<写真: ニューホライゾンズの打ち上げ。>
(Photo: NASA)

しかし、やはり真実は行ってみないことには分かりません。冥王星、そしてその遠くのカイパーベルト天体を探査するために、NASAの探査機「ニューホライゾンズ」(*3)が、1月21日打ち上げられました。

ニューホライゾンズは、全体に三角形の形をした探査機です。大きさは2メートルほど、重さは478キログラムですから、それほど大きな探査機ではありませんが、冥王星まで行くということを考えると大きいともいえるでしょう。

探査機にはカメラをはじめ、太陽風の測定装置や紫外線のスペクトロメータなど、6種類の科学測定器が搭載されています。探査機は冥王星とカロンをフライバイ(接近して通り過ぎること)して、これらの天体を詳しく調査します。特に地表の様子や、冥王星の上層大気、電離圏などの調査には興味が持たれています。



<冥王星を通り過ぎ、カイパーベルト天体へと向かうニューホライゾンズの想像図。>
(Photo: JHUAPL/SwRI)

フライバイということで、通り過ぎてしまうのはちょっと残念ですが、冥王星までの距離を考えると、「まず行くこと」が優先されるのは仕方ないことでしょう。ちなみに、ニューホライゾンズは、これまで人類が打ちあげた探査機の中でもいちばん速い探査機で、地球から月の軌道までをわずか9時間で通過する速度を持っています。この探査機を持ってしても、冥王星に達するのには約10年かかります。到着予定は2015年。そして冥王星を過ぎてから、さらにその先にあるカイパーベルト天体の探査も予定されていますが、これは2016〜2020年頃になる予定です。何とも壮大な探査計画ではありませんか。

このニューホライゾンズ計画には、実は日本の国立天文台も関わっています。冥王星をフライバイした後、ニューホライゾンズはカイパーベルト天体を探査する予定ですが、なにしろ遠い天体のことですから、どのような天体を探査できるか、まだ詳しい情報はありません。そこで、すばる望遠鏡を使って、探査の候補となりそうなカイパーベルト天体を探そうという計画です。既に観測が行われ、そのデータの中から候補になりそうな天体を選び出す作業が行われています。

ちなみに、もともとのニューホライゾンズ出発日の1月17日は、冥王星の発見者クライド・トンボーの命日でした。2月18日は冥王星の発見日でもあります。これも何かの縁なのかも知れませんね。(2006/2/23)


(*1) 天文単位とは、太陽から地球までの距離を長さの単位としたもので、約1億5000万キロメートルです。AUと略されることもあります。
(*2) 以下、カイパーベルト天体と略します。英語で略してEKBOと呼ばれることもあります。
(*3) 本やウェブによっては、ニューホライズンズ、ニューホライズンと書かれていることもあります。


宇宙航空研究開発機構 寺薗淳也

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