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シュヴァスマン・ヴァハマン第3彗星(注)が地球に接近して、明るくなりつつあります。

このシュヴァスマン・ヴァハマン第3彗星(73P/Schwassmann-Wachmann)は、1930年に、ドイツのシュヴァスマンさんとヴァハマンさんによって発見された小さめの彗星で す。5.4年の周期で太陽を一回りする短周期彗星で、ゆがんだ軌道のため、遠いときは木星の軌道付近まで離れますが、近いときは地球軌道の少し内側にまでやってきます。そのため、タイミングによっては、彗星が太陽に近づく頃に地球に大接近します。1930年の発見時にも、地球に0.06天文単位にまで近づいていました。ただし、タイミングが合わないと、小さい彗星ですので、なかなか見えません。そのため、1979年に再発見されるまで、なんと半世紀にわたって行方不明となっていた”謎の彗星”です。

もうひとつ、この彗星には謎があります。1995年に太陽に近づいたときには急激に明るさが上昇し、その後、彗星の核が3つに分裂しているのが観測されました。汚れた雪玉 とも言われる彗星は、太陽の熱で融け蒸発していく間に、核が分裂してしまうことがよくあります。なかには、2000年のリニア彗星のように、ばらばらにくだけた破片がすべて蒸発してなくなってしまうものもあります。

シュヴァスマン・ヴァハマン第3彗星の場合、2000年に太陽に近づいたときには、3つに分裂した核のうち2つが戻ってきたのが確認され、新しい破片も発見されました。そし て、今年の3月には、新たに4つの核が発見されました。さらに、4月6日の時点では、破片の数は数十個にもなっていることが確認されました。どんどん分裂を繰り返している ようです。最も明るいのがC核ですが、この核は現在のところ分裂する様子はありません。ところが次に明るいB核、その次に明るいG核のふたつが、4月のはじめに急激に増光 しました。とりわけB核は、一時はC核と同じような明るさとなったほどです。その後、二つの核とも明るさは平常に戻っていきましたが、どちらも分裂に伴う増光であったこ とがわかってきました。B核では、比較的大きめの破片が離れていく様子が、日本各地のアマチュアや公開天文台で撮影されつつあります。とりわけヨーロッパ南天天文台の口 径8メートル VLT(Very Large Telescope)望遠鏡では、B核から離れていく7つの破片が捉えられています。一方、G核の場合、もともとの核が暗いこともあって、明らかな 分裂破片は地上観測では捉えられていませんでした。解像度の高いハッブル宇宙望遠鏡で4月18日に撮影された画像では、B核と同様に数多くの小さな破片が”ミニ彗星”と なっている様子がわかります。分裂した核が、再び分裂を繰り返していく、そんなダイナミックな現象が今まさに起きているわけです。小さな破片は、かなり短い期間で蒸発 し尽くしてしまうのではないか、と考えられていますが、それらがどの程度の寿命となるか、また今後もさらに分裂が続いていくのか、大変興味深いところです。

このような興味深い現象が、地球に近づく状況で起こっていることも、世界中の研究者が注目する理由となっています。この彗星の地球への接近距離は約1200万キロメート ルで、これまで軌道がわかっている彗星の中での地球への接近距離としては歴代21位となります。C核の地球への最接近は5月12日ですが、予想通りに明るくなっていけば、5等 から4等級くらいになり、空が暗いところならば肉眼でも見えるかもしれない、と期待されています。しかしながら、4月末現在、その明るさは思ったより伸びず、8等台とか なり暗いようです。また、13日が満月のため、ちょうどこの頃は月明かりがあり、彗星のようなぼうっとした天体は見えにくくなります。できれば、ゴールデンウィーク頃の 月明かりのないときに、双眼鏡を用いて眺めてみるとよいでしょう。もしかすると、今回も皆さんが眺めている最中に、また分裂を繰り返し、明るくなるかもしれませんの で、期待したいところです。

(注)この彗星の正式名称は 73P/Schwassmann-Wachmannです。発見者がドイツ人であることから、ここでは「シュヴァスマン・ヴァハマン」と表記しています。英語圏では、 「シュワスマン・ワハマン」と発音されることも多く、そのような表記も長い間使われてきています。(2006/5/8)


自然科学研究機構国立天文台 渡部潤一

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