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昨年の夏、太陽観測衛星「ひので」を打ち上げた際、日本画家の「卵」たちに内之浦に来ていただき、実験場や発射の瞬間を見学してもらいました。数学者の吉田武さんの提案に基づくものです。その体験をもとに描いて応募された10点あまりの日本画の中から、審査の結果、今川教子さんの「光」をはじめとする4点が優秀作に選ばれ、このたび東京・丸の内OAZOのJAXAiで表彰式が行われました。審査委員長を務めていただいた本江邦夫さん(多摩美大教授、府中市美術館長)にも出席していただきました。内之浦にもご足労頂いた中野嘉之さん(多摩美大教授)が体調を崩されてご欠席だったのは残念ですが、表彰式では、描いたときの心のうちがリアルに語られ、今更ながら素晴らしい作品群だとの感を深くしました。作品は今月いっぱい、JAXAiに展示してあります。

名古屋における愛・地球博の際には、宇宙をテーマにした音楽を募集し、素敵な曲がいっぱい寄せられました。「ペンシル50年記念のフェスティバル」のときには、谷川俊太郎・賢作さん父子というゴールデン・コンビに「鉛筆の歌」を作っていただきました。その後これらの音楽を最大限有効に使わせていただいていないという反省はありますが、今後はぜひもっと活用させていただきたいと思っています。今年暮れには、いよいよ日本の実験モジュール「きぼう」の国際宇宙ステーションへの輸送が始まります。私には、日本の宇宙飛行士が活動する空間は、日本という国を象徴するムードでいっぱいにしたい想いがあります。それはインテリア・デザインなどの技はもちろんですが、芸術の力を借りる必要があるでしょう。

日本を暗い雲が覆いつつあるように感じるのは私だけではない証拠が、あちこちにあります。芸術と組んで宇宙の評価を高めようというのではなく、宇宙という分野のもつ「生きるための動機付けの豊かさ」を多くの人々と共有することによって、溌剌とした社会を築いていきたい──宇宙にしかできない大切な貢献であると信じています。そのような道筋に沿ったさまざまな提案があれば歓迎します。

以下は拙い私の感想です。日本画の「ワザ」についてはよく分かりません。

最優秀賞「光」(今川教子さん)
ロケット発射の瞬間の鮮やかで華やかな光と、それが目指して上昇しやがて浸る静寂の宇宙が、鮮烈な対比の印象で描かれています。炎(ほむら)と極真空が画面いっぱいを行き来しており、いつまで観ていても飽きないですね。

優秀賞「夢」(中嶋安階さん)
実は、彼は「ひので」打上げの見学には参加しなかった人です。その後スケジュールを都合して内之浦に来てくれました。そのときの印象から、主のいなくなったランチャーの持つ荘厳な寂しさを描いてくれたのだと思います。現場の人間もぐっと来る絵です。

優秀賞「夢の向こう」(熊谷曜志さん)
轟きを放ちながら上昇していくロケットと炎を、独特の感覚で捉えてありますね。入賞作の中では唯一ロケットそのものに密着した作品ですね。ロケットの内部においてリアルタイムで起きている燃焼の凄さまで感じさせてくれます。

審査員特別賞「宙(そら)」(田中敦子さん)
中嶋さんの作品と少し違って、屹立するランチャーブームとともに、空にも目を移しながら一体感を持たせた描き方が、心を沸き立たせてくれます。ロケットの世界と宇宙の謎に挑む世界を結合してくれそうな深い画想が感じられます。(2007/2/7)


宇宙航空研究開発機構 的川泰宣

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