さる7月22日、NASA(米国航空宇宙局)の土星探査機カッシニは、その最大の衛星タイタンの表面にたくさんの斑点状の地形を電波観測によって発見しました。これらは、タイタンの北極付近を広い範囲にわたって覆う、大きさが一キロメートルから100 kmくらいの湖であると推定されています。だとすれば地球以外の天体で見つかった最初の湖ということになりますね。

▲タイタンに見つかった湖(Photo: NASA)
これらは他の地域に比べて異常に滑らかで、しかも非常に暗いところから、液体であると結論されました。しかしタイタンの表面では、水はすべて凍っているはずですから、湖を作っているのは炭化水素(恐らくメタンかエタン)でしょう。そのいくつかの湖からは液体が刻んでいると思われる川が流れ出しています。
タイタンに大量にあるはずのメタンが、地下に巨大な帯水層ならぬ帯メタン層として存在するか、あるいは湖のかたちで表面に存在するかが注目されていたわけですが、これまでのところ帯メタン層は確認されていません。
カッシニが今後、これらの湖の形が季節によってどのように変化するか、風の影響をどのように受けていくか、またメタンの雨が降るのかどうか──このような点を明らかにしていくことが楽しみになってきました。
さて、2年前に土星に到着して以来、数々の新発見をなしとげているカッシニですが、このあたりで中間的な観測結果の総括をしておくべき時期かもしれませんね。

▲山岳地帯に発する多くの川 (Photo: NASA)
(1) 山岳地帯に発する多くの川の発見。これはホイヘンス突入プローブによる。

▲タイタンに見つかった火山
(2) タイタン表面に火山を発見。タイタンのメタンの源ではないかと考えられている。

▲タイタン上空にかかった靄(もや)
(3) タイタンをグルッと取り囲む靄(もや)。500 kmの高度にもっとも美しい層があり、これは水の氷ではないかと推定されている。

▲タイタンに発見された謎の大赤斑
(4) タイタン表面に謎の大赤斑

▲タイタン表面の詳細な地形 (Photo: NASA)
(5) タイタンの表面の詳しい地形を広い範囲で見つけた。

▲異なる波長でとらえたタイタン
(6) 異なる波長でタイタンを撮像。数々の情報をもたらしている。

▲エンケラドスの噴水
(1) 衛星エンケラドスの南極域から豪快に吐き出される、巨大な(恐らく)氷の噴水。

▲エンケラドスの詳細な表面
(2) 衛星エンケラドスのある部分が激しく受けた地質変動を示す画像。クレーターは丸くなってしまっている。

▲デイオーネ(左)とレア(右)
(3) 衛星レアの表面物質について示唆を与える写真(上)、特にたくさんのクレーターによって複雑に彩られた詳細な表面地形(下)。

▲クレーターによって彩られたレアの表面

▲デイオーネ(左)とレア(右)
(4) 衛星ディオーネの表面物質について示唆を与える写真。

▲ディオーネと土星のリング
(5) 衛星ディオーネとリングが同じフレームにおさまっている珍しいショット。

▲レアと土星のリングの端
(6) 衛星レアとFリングの端とが一緒のフレームにおさまった画像。

▲衛星ヒューぺリオンの表面
(6) 衛星ヒューペリオンのお菓子のようにパリパリした感じの画像。

▲電波実験の時のリング(Photo: NASA)
(1) 地球とカッシニを、リングを挟む位置に置いて、電波による掩蔽実験。

▲土星に映じたリングの影
(2) 土星に映じたリングの美しい画像。

▲カッシニの空隙の紫外線観測
(3) 「カッシニの空隙」の紫外線観測。

▲ケプラーの空隙に確認された小衛星(Photo: NASA)
(4) 「ケプラーの空隙」に小さな衛星を確認。これがリングを波立たせている。
実際にはまだまだ成果はあるが、とりあえずこれくらいにしておきましょう。
ところで、土星には49個の衛星があります。最大の衛星タイタン以外はすべて氷でできています。これらの衛星は、グループを作って土星をまわっており、土星に一番近いのは、Aリングの羊飼い衛星パンとアトラス。次にFリングの羊飼い衛星プロメーテウスとパンドーラ。FリングとGリングの間にあって軌道を共有しているのが、エピメーテウスとヤーヌスです。
Eリングの領域に入ると、ミマス、エンケラドス、カリプソ、テレスト、テティス、ヘレネー、ディオーネがあります。テレストとカリプソは木星とテティスのラグランジュ点に位置しています。また、ディオネとヘレネーは軌道を共有しています。エンケラドスの美しい画像が撮られています。直径はイギリスよりも短いということを示す画像が公開されています。

▲衛星エンケラドスの大きさ
Eリングの外側には、レア、タイタン、ヒューペリオン、イアペトスがあり、1300km離れた一番外側を、フェーベが他の衛星とは反対の方向にまわっています。フェーベは土星にとらえられた小惑星でしょうね。
西暦2000年になって、一気に十二個の衛星が新たに発見されました。大きさは直径5〜30kmとさまざまで、土星から最も離れた軌道を回っています。いずれも土星の重力に捕えられた小惑星であると考えられています。(2006/8/7)
宇宙航空研究開発機構 的川泰宣